研究について

 全ての物質には表面があります。そしてわれわれは、表面を通して物質を目にし、触れ、時に飲み込んでいるのです。表面の特性を知らずに、その物質の正体を暴いたことにはならない、と言えるでしょう。私たちは、泡や水滴、生体表面などの柔らかい表面で起こる不思議な現象の謎を解くべく、日々、研究に取り組んでいます。

 

1. 界面活性粒子 ~自然に出来上がるマイクロブロック~
 わたしたちは、水や油と混ぜると自然に界面に吸着して、いろいろな構造を構築する粉体「界面活性粒子」について研究しています。実は、脂肪酸結晶、たんぱく質、植物の胞子など、身の回りにあるありふれた粉がこのような性質を持っており、食品、化粧品、医薬品などに利用されているのです。ミキサーで軽く混ぜただけで、あっという間に綺麗な形を構築する粉のふるまいは、まるで意思を持っているかのようで、まさに「自然に出来上がるマイクロブロック」といえるでしょう。私たちはこのブロックの特性を明らかにし、界面科学の新しい分野を切り開きたいと考えています。

教育方針イメージ

界面活性粒子が構築する自己組織化構造.
化学と工業, 2005, 58, 101-104.


2. 手触りがヒトとそっくりの人工皮膚
 人工皮膚の多くは医療への応用を目的としたものであり、皮膚独特の手触りを再現したものはほとんどありません。われわれは、皮膚が角層から真皮に至る階層構造を有していること、その表面にきめや毛穴などの凹凸が存在することを考慮して人工皮膚を開発しました。柔らかいシリコーンゴムを硬いウレタン樹脂で覆い、その表面に規則的な文様を刻むことで、しっとりとして柔らかいヒト肌に近づけることができた。この人工皮膚は、既存の人工皮膚と比べて抜群に高い皮膚類似性を示したため、ヒューマノイド型ロボットなどへの応用が期待されます。

目標イメージ

手触りがヒトそっくりの人工皮膚.
日本機械学会論文集(C編) 2007, 73, 1827-1833.


3. ユニークな界面活性物質の探索
 界面活性剤は古くから洗浄剤や分散剤として用いられてきました。最近では、ナノ物質を調製し使いこなすためのキーマテリアルとして脚光を浴びています。私たちは、ユニークな界面活性物質の物性を評価し、新たな機能を探索しています。

目標イメージ

界面活性剤金属塩結晶の電子顕微鏡写真.
極めて高い潤滑特性を示す.
Chem.Lett. 2002, 216-217.